投資家心理第3弾、今回で最後です。
人間はどれだけ多くの心理効果に支配されているか、それがどうトレードに影響しているかを学んでいきましょう。
全部覚えたら、あなたはもう相場心理学者の免許皆伝です。
Contents
悲観主義と楽観主義-ペシミズムとオプティミズム
「テーブルの上にあるウイスキーのボトルを見て、『もう半分しか残っていない』と嘆くのが悲観主義者。
『まだ半分も残っている』と喜ぶのが楽観主義者である」ジョージ・バーナード・ショー
私はかつて、トレード中の自分の心理の変化や移り変わりを知るために、思ったことを全て書き出していた時期があります。
- ヤバイ下がった!
- やった!あがった!
- もっと下がるかもしれない
- 予想があたった!
- ここが底値のはずだ!
- まだまだ上がる!
- 損切りが連続。クソが!
- 含み損が辛い
- 含み益が増えて嬉しい
- ロングを見送ったのに上げてしまった。
- エントリーしなければよかった
- 今日はマイナスだ。イライラする
などなど。
その時の状況によって楽観的に傾いている時もあれば、逆に無駄に悲観的になっていることもあります。
良いトレードをするには、「数字だけ」の判断で投資するようにしましょう。
ここまでいったら利食い、ココを割ったら損切り、ここの価格まで行ったら買いポジションをいくつ持つなどです。
出来るだけ無で投資しましょう。
感情ではなく数字だけで判断する癖は大事です。
生存者バイアス
例えば昔ながらの体育会系の中で育ってプロ野球選手になった人が、自分も体罰を受けてきたこともあって体罰を肯定するような発言をするのも一つの生存者バイアスです。
他にも、ワタミの創業者の名言である「無理というのはですね、嘘吐きの言葉なんです。途中で止めてしまうから無理になるんですよ」。これも生存者バイアスです。
トレードについても同じです。
ほんの少しの期間だけまぐれで勝てたトレーダーが、「エリオット波動じゃないと勝てない」と主張したりしている現実があります。
これを見て、他のトレーダーが「そうなのか・・・」と信じると、本当は勝てない手法であっても勝てる手法を信用されるようになり、結果として負け組トレーダーを量産することになるのです。
情報バイアス
投資家は多くの情報を得ようと必死になって情報を集めようとしてしまいます。
多くの情報を集めることは、安心材料を集めるという意味合いだけで、それが正確に判断できる情報源にはなりえないなのです。
逆に悪影響を及ぼす結果になる可能性もあります。
例えば沢山のインジケーターを使えば相場を示すテクニカルの情報は増えます。
しかし、情報が多すぎるがゆえに迷いが生じ、結果的に正しい判断が難しくなるのです。
利用可用性ヒューリスティック
あなたは頭痛がしているので、頭痛薬を探しています。
しかし、ドラッグストアには多くの頭痛薬があってどれが良いのか分かりません。
その時、テレビCMで見たことがある頭痛薬を見つけました。
その頭痛薬の効果がどれほどなのか、有効成分は分からなくても、きっとあなたはその頭痛薬を買う事でしょう。
このように、人間は判断をするとき自分の記憶に残っている情報を優先して頼る傾向があります。テレビの広告などは何度も何度も商品名を読んだり商品を紹介することで視聴者の記憶に留めて、商品を購入する時のトリガーとして機能させているのです。
トレードではこの利用可能性ヒューリスティックを上手く使う方法があります。
それは、似たような勝ちパターンを徹底的に頭に入れて覚えるのです。
「これからどのような動きをするのか?」ではなく、「過去にどのような動きをした時にどうのように動いたのか?」というのを研究して頭に何度も叩き込む必要があります。
これにより、パッと見ただけで良いエントリーポイントが分かるようになります。
勉強と同じで反復勉強がいい成績に繋がります。
正常性バイアス
レバレッジの掛けすぎは危険と言われていますが、正常性バイアスが関係しています。
レバレッジを掛けすぎると、ちょっとした変動で、それまでと比べて損益が変動してしまいます。
しかし、損益の変動が起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、人間にはそのようなストレスを回避するために心の平安を守る作用が備わっています。
大きく逆方向に動いた時であっても、脳が勝手に大丈夫と判断してしまうので、損切りが遅れてしまったり、手仕舞うところで手仕舞えなかったり、利益が無限に伸びていくと錯覚したりして正常に動けなくなるのです。
レバレッジを掛けないほうが良いと言われる理由はこういうところにあります。
自我消耗
例えばやりたくもない残業をした後に、沢山食べてしまったり、イライラして自制が効きにくくなることです。
人は何かのストレスを与えられると、自制心を消耗します。
自制心には限りがあり、消耗しすぎると、他のことにも自制が効かなくなるのです。
トレーダーにとって最大のストレスは、損失を抱えるときですね。
ポジポジ病という損失した時に何度も入り直して損失を重ねてしまう現象があります。
これは、自我の消耗が関係しています。
自制心がなくなり意志力の低下、認知力の低下によって普段なら絶対入らないような所で売買してしまい結果的に損失を抱えてしまうのです。
トレーダーにおいて相場から離れるというのは、ストレスからの開放であり「チャートを気にしない状態」になっていなければ本来の自分の投資力を回復できていないと言えます。
投資力を回復できていない状態で相場に挑んでも、勝てる可能性は低くなります。
人間の脳みそや心は万能でもなければロボットのように毎回同じようには動きません。
相場は一回一回が勝負になります。
完全な状態でトレードできなければ小さな損失を多数出すことになります。
投資家にとっていちばん重要なのは体調管理と言うことを覚えておきましょう。
信念バイアス
- 絶対上がると思い込んでしまうと、下がる兆候が見えなくなる
- 含み損が増えてはいるけど、それでも上げる情報ばかりを探している
トレーダーによくある話ですね。
これを防ぐには、時間を空けて相場との距離を取るしかありません。
ポジションをリセットして、相場のことを忘れるようにしましょう。
相場のことが気にならなくなった時、相場を冷静に見つめられるはずです。
とある作家さんは、一度書いた原稿を寝かすそうです。
何ヶ月も見ないで、完全に原稿の事を忘れるまで見ないそうです。
そして忘れた頃に原稿を読み直すと、良いところと悪いところがハッキリわかりより良い原稿に仕上がると言います。
この事例も信念バイアスが関係しています。
自分で書いたものは、客観的に判断するよりも良いものと勝手に判断するからです。
相場においても、忘れた状態にして挑むといい結果が生む可能性が高まります。
モラル正当化効果
トレードルールを守る習慣が出来ていないトレーダーは、さっきまでルールを守っていたのにも関わらず、突然ルールを無視することがよくあります。
これは、モラル正当化効果によるものです。
人間は、ルールを守るという行為に反する行為をしたくなる生き物です。
「さっきはしっかりとルールを守れたし、今回だけ・・・」
これが破滅への道となるのです。
モラル正当化を防ぐには、何度もルール違反による損失を経験するしかありません。
損失を続けていけば、徐々にルール違反の回数は減っていくはずです。
車の運転を例に挙げましょう。
免許取り立ての頃は、安全運転を心がけます。
しかし、慣れてくると次第に運転は荒くなってきますよね。
そんな時、たまたま荒い運転が警察に見つかり違反金を取られます。
それが何度か続くと、普通なら徐々に運転が上手くなり、違反も少なくなります。
トレードでも同じことが言えます。
トレードルールを構築できた次の段階は、トレードルールの習慣化が必要になります。しかし、何度もルール無視による大損失を生んだ経験がなければ、習慣化は難しいのです。
ルールを無視してしまった自分を責めなければ一生習慣化なんてできないので、ルール無視を悔めない人はトレードルールの習慣化は無理です。
なので、ルール無視をやってしまった場合には、「なんでルール無視してしまったんだ!」と大いに自分を責めましょう。責めた分だけ、自分の習慣化につながります。
コントロール幻想バイアス
エントリーしたら利食いと損切りの注文を入れて、あとは放置するだけ。
というルールがあったとします。
このルールなら、ポジション保有中は一切チャートを見る必要なんて無いのですが、実際にはチャートをガン見して含み損益の増減に一喜一憂する人がいかに多いことか・・・・。
ポジションを持った後の、いくらチャートを見ても相場は自分にとって有利に動きません。
それにもかかわらず、チャートを見てしまうのがコントロール幻想バイアスです。自分がチャートを見ることで、ポジションが良い方向に進むと頭のどこかで考えているのです。
他のコントロール幻想バイアスとしては、「今回のエントリーは絶対に勝てる!」と信じてエントリーしたりすることも挙げられます。
自分がポジションを取った後、相場を動かすのは自分ではなく他の市場参加者です。
それにもかかわらず、自分の判断で相場が動かせる・・・と考えるのもコントロール幻想バイアスなんですね。