今回の記事では、エリオット波動について解説します。
エリオット波動については「最強説」や「全く持って役に立たない」など賛否両論あります。
数あるテクニカル分析の中で、これほど人によって意見の違う手法は無いんじゃないかと思います。
まず今回の記事を書く上で私のスタンスを述べさせてもらうと「エリオット波動は使えない」です。
理由は複雑すぎて客観性が乏しいから。
客観性に欠けるチャート分析は、その時々によって判断が変わったります。
人によっても解釈が異なります。
この事実がある以上、エリオット波動は本当に役に立たないのです。
エリオット波動が好きな方はご覧にならないことをオススメします。
Contents
エリオット波動理論の成り立ち
エリオット波動理論は、アメリカの会計士であったラルフ・ネルソン・エリオットにより、株式市場の理論として考えられたものです。
エリオットの死後、この理論に関する論文や書籍が発表され、そののちに投資家の注目を集めるようになりました。
現在はロバート・プレクタージュニアという人がエリオット波動の大家として様々な書籍を出していますし、日本でも一部の熱狂的なエリオット波動支持者がブログや情報商材でその手法を公開しています。
ラルフ・ネルソン・エリオットの考案した「オリジナルのエリオット波動」に様々な理屈を継ぎ足して、何とか過去の相場に合わせようとしているのが現在のエリオット波動です。
過去の相場に合わせるために何でも継ぎ足しているので、矛盾だらけで理論が崩壊しています。過去の相場に合わせているだけなので将来を予測できません。
相場は上がるか下がるかなので、当たることもありますが、その時にエリオット波動の商材を売る詐欺師や信奉者は大声を上げて「やっぱりエリオット波動って凄い!」と言うわけです。バカですね。
エリオット波動理論の特徴
エリオット波動理論は株式相場の相場分析法で、簡単に言えば、相場にはサイクルがあり値動きは一定のリズムとなるというものです。
エリオット波動理論はダウ理論の影響を受けており、エリオット自身が「波動理論はダウ理論の補足である」とも述べていたそうです。
またエリオット波動理論は、ダウ理論やダブルトップ・ヘッドアンドショルダーなどメジャーなチャートパターンと同様に、相場の天底の予測などを早い段階で行うことが出来たり、相場の先の値動きを予測することの出来る理論とされています。
エリオット波動理論の基本原則
エリオット波動理論には、以下の3つの側面があります。
- 波動のパターン・形状
- 波動の到達地点などを図る比率
- 時間
ここでは主に①波動のパターン・形状について見ていきます。
波動理論によると、相場の値動きは5つの上昇波と3つの下降波からなると言われており、それぞれの波には特徴があります(3波は一番長く5波は3波ほどの強さはない等)。
まずは下の図を見てください。
1波から5波までが上昇波(2波と4波は上昇における調整波)です。
エリオット波動自体が株式相場で得られた情報から成り立っていますので、下落は3つの波から構成されることになっていますが、2つの通貨の価格レートを示す外国為替市場においては下落のABC波は通用せず、下落も1~5波が相当すると言われています。
なお、この一つの波はさらに小さな波に細分化されるとしています。
下の図では、波を細分化したモデルを示しています。
例えば上昇波動の5つの波を細分化すると、25の波になります。
それをさらに細分化すると125の波となります。
相場はフラクタルなため、大きな波の中に延々と小さな波が続くのです。
これらの数字は全てフィボナッチ数列の数字と合致する・・・と言いうのがエリオット波動の基本です。
何となく理路整然としているようにも思えますし、波動理論ではこれ以外にも、上昇下降途中の調整波や、押し戻りの比率等のサイクルについても細かく説明されていますので、エリオット波動を信じてハマってしまう人も多いのが現状です。
しかし、現実にはそのほとんどが後付けです。
エリオット波動は解釈の幅が広すぎるため、どんな相場であっても、後付けでエリオット波動で解説できるのです。
エリオット波動理論のトレードにおける有効性
最後に、エリオット波動理論の有効性についてです。
あくまで私個人の見解ですが、控えめに言ってもトレードには活用しにくいと思っています。
その理由は以下の通りです。
- 波の定義が曖昧
- フィボナッチ通りに相場は動かない
- 時間足の数だけ波があるのは迷いの元
- 波動サイクルを見つけたところで勝てない
実際に検証すると分かりますが、エリオット波動を理解しようとするには膨大な時間が必要です。
では、エリオット波動を理解して勝てるのでしょうか?
実はそういうわけではありません。
エリオット波動はあくまでも理論。
しかも理論とは言っても、ランダム性の高い相場を無理矢理こじつけて理解しようとするものですから、なんとでも解釈できるのです。
ですから、エリオット波動が何となく理解できるのは過去チャートのみ。
リアルタイムで波動のサイクルを見つけるのは難しいですし、それが本当に理屈通りに動くかは別問題です。
詐欺師に愛されるエリオット波動
エリオット波動は、詐欺師に愛されます。
なぜなら、全てが後付けでどんな解釈でもできるからです。
ネット上であり得ない程の高勝率を謳って自分の商材やオンラインスクルールを販売している人のブログやサイトで「エリオット波動」という文字が出てきたら、それはほぼ詐欺だと考えてもらってOKです。
購入したところで、エリオット波動が当てはまった都合の良いチャートを延々と見せつけられて終わるのがオチです。頑張って解釈しようとしても徒労で終わるでしょう。
ネット上でもエリオット波動推奨が多いけど・・・
ネットで「エリオット波動」と検索すると、多くのエリオット波動礼賛記事や動画がヒットします。
これを見て、「やっぱりエリオット波動は使えるんじゃ・・・」と思ったとしたら、それは思考停止です。
よくよく考えてください。
エリオット波動はリアルタイムで解釈が非常に難しい一方で、後付けなら簡単に何とでも言えます。
つまり、後付け解釈ならカリスマになれて、お金が稼げるのです。
例えばYouTube。
YouTubeは視聴回数でもらえる広告料が増えます。
・・・ということは、難解なため何度も見てもらえるエリオット波動の解説は、動画作成者側としてはオイシイと思いませんか?アホなトレーダーが「エリオット波動は勝てる」と信じていたら、エリオット波動に関する動画を出すだけで視聴回数が稼げますよね。
ついでにエリオット波動を解説する自身の商材も売ったらウハウハですよね?
月額のオンラインスクール形式にしたらもっと稼げますよね?
エリオット波動で稼げるのはトレードではありません。
エリオット波動について講釈を垂れることでお金が稼げるのです。
コレ重要ですよ。
私がエリオット波動理論は活用しにくいと言った意味が、お分かりいただけたでしょうか?
最後に、テクニカル分析の迷信という本でエリオット波動について痛烈に批判している内容がありましたので引用します。
データから理論を導き出したわけではなく、理論をデータに合わせただけだから、たとえエリオット波動理論の基本概念が間違っていようと、この分析手法が過去のデータにぴったりフィットするのは当たり前のことなのである。
エリオット波動は反証の余地を与えない
前述の通り、エリオット波動理論は「どうにでも解釈できる」という特徴があります。
これは厳密に言えば理論でもなんでもなく単なるこじつけです。
- 波の始まりと終わり
- 波の数え方
- 波の延長、エクステンション
- 副次波、修正波
- 波の比率
などなど相場にフィットさせるための様々なパラメーターが存在するため、後付けであれば何とでも言えるのです。
そのため、エリオット波動は反証の余地を与えません。
例えば、「MA5とMA20のクロスオーバーは勝てる」という理屈があったとします。
これが正しいかどうかを確認するためにはどうすればいいでしょうか?
やり方は簡単です。実際に検証すればだれの目にも明確に分かります。
移動平均線のクロスオーバーは、客観性が高く、誰が見ても同じ結果になります。
トータルで利益が出なければ「勝てない」という反証が可能なのです。
ではエリオット波動はどうでしょうか?
こじつけで「どうにでも解釈しようとする」エリオット波動の場合、間違っていたことが客観的に分かりません。つまり、反証をすることができないのです。
科学哲学者のカール・ポパーは、反証の余地を与えない理屈は「非科学」としています。
テクニカル分析は科学の分野とアートの分野の両方を持ち合わせています。
私は、テクニカル分析を利用するのであれば、最低限科学的な根拠を持ち合わせたうえでアート的な解釈を付け加えるべきだと考えています。
少なくともトレード手法に反証の余地がなければ、使う意味すらないと思うのです。
エリオット波動の解釈は人によって全く違います。
このような理由から、私はエリオット波動は支持しませんし、使いたいとも思いません。
もし、この記事を読んでいるあなたがエリオット波動を極めようと頑張っているのであれば、エリオット波動にこだわるのではなく、もっと客観性の強いやり方でトレードを始めることをお勧めしますよ。